車両の扱いは、株式会社と医療法人において異なります。
詳細を書きました。
医療法人での保有等は要注意
車両はその法人の事業で使用する場合、その法人で保有することができます。
株式会社で保有する場合は、減価償却の対象となります。
中古で購入する場合、耐用年数が最短2年なので、しばしば節税名目で紹介されることもあります。
一方、医療法人では車両の保有等は制限されていて、特に高級外車の保有や賃借は認められないとされています。
根拠規定は医療法54条です。
株式会社と異なり、収入の一部が保険診療である医療法人は半公的機関に該当します。
ゆえに医療法人において、特定の構成員のみで利益分配を行ってはならず、高級外車保有等はその行為の一環と扱われるためです。
医療法人設立認可申請の際に、仮に車両を拠出する場合、車種の確認のため車検証写しの添付を求められます。
定款変更認可申請の際も同様ですが、医療法人で車両を保有する際は、車種や金額が適正か注意する必要があります。
ゆえに医療法人が車両を保有する場合、仮に都道府県等から説明を求められても対応できるよう準備する方が良いです。
車両使用規程なども整備し、作成することが求められます。
保有等が認められない訳ではない
医療法人で車両を保有することは、認められないわけではありません。
診療所によっては在宅医療を行っているケースもあり、その場合は通常は車両を使用しているケースが大半です。
当然ですが、在宅医療を行う上で、訪問診療や往診で使用する場合は、保有等が認められます。
ただ、高級外車で訪問診療や往診は通常はしないはずなので、一般的に往診車として相応しい範囲での保有等に限られることになります。
保有台数に制限はありません。
実際に診療で使用するなら、必要に応じて何台持っていても良いことになります。
これは株式会社でも同様です。
過去にお客様からの質問で、「法人での保有は2台までならOKですよね?」と聞かれたことがありますが、事業として全く使ってないなら1台であってもNGです。
逆に実際に事業で使用しているのであれば、複数台保有していても特に問題はありません。
以下私見ですが、医療法人において高級外車等の保有等が制限されることには、多少の違和感を覚えます。
指摘される根拠が医療法54条という、ある意味漠然とした規定のみであり、都道府県等のHPや厚生労働省の通知等に高級外車等はNGとの記載は見当たりません。
高級の定義も不明、金額上限の記載も特に無く、指摘されるのは定款変更の時位であり、杓子定規の如く「高級外車=配当類似」の図式には、疑問符が湧くのが一般的思考ではないでしょうか。(公務員は全員が全員、公務で高級外車を使用することがない?)
こんなことを述べても仕方がないのですが、取り敢えず現状では、医療法人においては車両の扱いには気を付けましょう。
個人診療所での注意点
今回のテーマからが趣旨が外れますが、個人診療所については高級外車保有等の制限はされません。
事業として使用しているのであれば、医療法上それを制限する規定はありません。
(税務上の問題はまた別)
医療法54条は医療法人の配当行為及びその類似行為を禁止するものであり、個人診療所には及びません。
個人診療所にそもそも非営利性は求められません、(個人病院は別)
税務上では、実際に使用しているのであれば、仮に外車であっても公正妥当な金額の範囲内であれば、減価償却することは可能です。
個人診療所で車両の減価償却を行う場合、注意する点は適正な事業共用割合で按分することです。
仮に事業共用割合が50%であれば、減価償却費に50%を乗じた金額を経費計上します。
間違いが多いのはこの先で、車両の減価償却費を按分するのであれば、車両に纏わる全ての費用を按分しないと矛盾することになります。
車両に纏わる費用を思いつくまま挙げてみると、下記となります。
・ガソリン代や洗車代
・車検費用、車両整備費、車両に係る消耗品購入等
・タイヤ交換(スタッドレス含む)
・車両保険料
・自動車税などの租税公課
・その車両の駐車場代
etc
車両に纏わる費用は結構幅広く、総額にするとそれなりの額になることも多いので、正確に把握して、按分計算を忘れないことが求められます。
また、車両を事業共用しているのであれば、売却や買い替え時に譲渡所得税が課税されます。
課税事業者であれば消費税の対象にもなります。
特にインボイス登録して消費税を納めるようになった方は注意が必要です。
売却額によっては課税形態が変わる可能性があります。
税務署への届出可否の検討を失念しないようにしましょう。
まとめ
医療法人や個人診療所で、車両を保有する場合の留意点を簡単にまとめました。
特に医療法人と株式会社では、車両に対する扱いが異なるので注意が必要です。
医療法人は、剰余金の配当をしてはならない。