相続の当事者は、あくまで相続人

相続の仕事に携わると、色々な案件を耳にすることがあり、そのうち失敗例も多々あります。

失敗例の一つが、遺産分割における相続人以外の第三者の口出しによるものです。

相続人以外の第三者は介入してはならない

相続あるあるですが、相続の分割協議に相続人以外の第三者が介入するとロクなことになりません。

多いのは相続人の配偶者。

裏で相続人に入れ知恵するだけならまだしも、直接分割協議にまで加わり、あれこれ主張するような方が稀にいます。

相続の当事者は、あくまで相続人です。

分割協議に相続人以外の第三者は、絶対に加わるべきではありません。

遺言が無い場合、親の遺産をどうすべきかを考えるのは、相続人でなければなりません。

当事者でもない第三者の干渉ほど危険なものは無いと思います。

トラブルの一例

仮に次のようなケースを想定します。

遺産全体10で、相続人は子2人(兄と弟)

遺産の内訳は、不動産5、預貯金3、上場株2

兄弟で話し合い、不動産は弟が取得する方向で話が進みました。

仮に半々に分割すると、兄が預貯金と上場株、弟が不動産という形になります。

相続税も、兄は相続した預貯金で支払い可能、弟は自らの貯金で何とか支払うことが出来そう。

ただ、弟は被相続人と別居していましたが、逐一被相続人の介護を行っていたため、明らかに負担は大きいものでした。

さらに不動産を引き継ぐと、都内の一等地の為、相続後の固定資産税負担も重くのしかかります。

そこでさらに2人で話し合い、兄が弟へ上場株を譲ることにしました。

弟が上場株を取得すれば、相続税を納税しても、ある程度の金融資産の残が見込めます。

上場株の配当も見込めるため、今後の固定資産税納税に充当できます。

ただ、話がまとまりかけていたのに、ここで兄の配偶者が余計な介入をしてきます。

「あくまで法定相続分に則って、半々で分割すべき」と強い口調で、わざわざ2人に迫ったのです。

結局、余計な諍いを起こしたくない兄弟はその意見を受け入れ、半々での分割を選択することにしました。

話が落着したように見えますが、その後の兄弟の生活を考えると、どうなのか。

兄も弟も仕事はリタイアしていて、頼れるのは自らの貯金と年金。

兄は預貯金や上場株を相続しているから、老後の生活に一定程度の安心があります。

前述の通り、弟は不動産を取得しているため、毎年固定資産税負担があります。

家が古いため、逐一修繕も行う必要があり、貯金を取り崩して相続税を納税している弟にとって負担は大きなものです。

仮に病気にでもなれば、医療費負担も嵩み、最悪不動産を売却することも検討しなければなりません。

不動産を売却すれば譲渡所得となり、相当な納税をする可能性があります。

これで平等な遺産分割だったと言えるでしょうか。

遺産分割協議書には納得いくまで押印してはならない

遺産分割協議書に実印を押印したら、遺産分割を認めたことになります。

少しでも分割内容に異議があるのであれば、協議書に印鑑を押印してはいけません。

確かに、揉めたくないから押印するというのも一つの考えです。

ただ、納得しないまま押印しても、いずれにせよ苦しい未来が待ち受けているかもしれません。

遺産分割協議など、一生に何度もあることではありません。

弁の立つ1人の人間によって強引に話が進められて、他の真っ当な人が害を被るなど、あってはならないことです。

遺産分割協議書は、一度押印したら、基本的にその後に覆すことはできません。

100%納得していないなら、押印すべきではありません。

上記の例では、兄の配偶者が余計な口出しをしたことが発端です。

但し、最終責任は、それを聞き入れて話を進めてしまった兄弟にあります。

第三者の口出しは、あくまで一意見として捉えなければなりません。

まとめ

上記の失敗例に似たようなケースは、ちらほら散見します。

相続人は相続人の立場として、自意識を持つべきと改めて思いました。

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