医療法人の決算後に役員報酬を改定する場合、社員総会の決議等が必要となります。
議事録にその旨を記載する際には、注意点があります。
社員総会では限度額を決議する
まず社員総会で、役員報酬総額の限度額を定めます。
役員報酬の損金不算入に係る形式基準で、不相当に高額か否かが問題となるのは、各人の報酬設定額でなく、報酬総額の限度額です。
役員給与の損金不算入は、実質基準と形式基準のいずれか大きい金額で判断されますが、
形式基準の限度額を超えて支給されている場合は、限度額を超える部分は否認される可能性が高くなります。
ゆえに社員総会で役員報酬総額の限度額を決議する場合は、その金額に少し余裕を持たせて設定する方が良いです。
限度額は、その総額に変更がない場合は、以後の事業年度にも引き継がれるので、毎期決議する必要はありませんが、万が一のことを考え、必ず金額の確認だけはするべきです。
社員総会の決議で限度額を決めた後に、社員総会若しくは理事会にて各人への報酬金額を決めていく流れとなります。
経済的利益についても言及する
定期同額給与は国税庁のHPで下記の記載があります。
引用:No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)|国税庁 (nta.go.jp)
定期同額給与については、
・役員報酬は原則、定額でなければならない
・改定する場合は、年に1度(決算後3か月以内)に改定しなければならない
・臨時改定事由、業績悪化改定事由に該当する場合は、その限りでない
ということが一般的に認識されています。(上記の1及び2)
失念されやすいのが、3の経済的利益です。
医療法上はあまりあってはならないことかもしれませんが、自らが意図していないところで役員に対し経済的利益が発生することは、ケースとしてあり得ることです。
税務調査などで、役員への経済的利益供与が明らかにされることもあります。
ゆえに議事録では、役員報酬に係る金銭の記載のみでなく、経済的利益の供与についても記載する方が好ましいと言えます。(医療法人の場合はケースバイケースですが。)
医療法人の場合の議事録提出義務との兼ね合い
例えば、東京都では、2年に1度提出する役員変更届には、社員総会議事録と理事会議事録を添付する必要があります。
ただし、これはあくまで事業報告の承認や役員の改選に伴う議事録です。
東京都の場合は、議事録例までWordでHP上に挙げていますが、その中に役員報酬改定に係る記述はありません。
ゆえに医療法人は、現状で役員報酬改定に係る議事録を都道府県へ提出する必要はありません。
まとめ
決算後に役員報酬改定を行う医療法人は多いと思います。
通常は議事録作成を行っていると思いますが、その内容についても毎年必ず精査すべきです。
定期同額給与とは、次に掲げる給与です。
1 その支給時期が1か月以下の一定の期間ごとである給与(以下「定期給与」といいます。)で、その事業年度の各支給時期における支給額または支給額から源泉税等の額を控除した金額が同額であるもの
2 定期給与の額につき、次に掲げる改定(以下「給与改定」といいます。)がされた場合におけるその事業年度開始の日または給与改定前の最後の支給時期の翌日から給与改定後の最初の支給時期の前日またはその事業年度終了の日までの間の各支給時期における支給額または支給額から源泉税等の額を控除した金額が同額であるもの
(1)(略)…3か月以内改定
(2)(略)…臨時改定事由
(3)(略)…業績悪化改定事由
3 継続的に供与される経済的利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの