東京都へ提出する医療法人の事業報告書等に実印押印が不要となった件の考察

医療法人は毎会計年度3ヶ月以内に、都道府県や保健所に事業報告書等を提出しなければなりません。

先日、東京都のホームページにて、事業報告書等の様式に改正が加わりました。

その改正について、思うことを書きました。

実印押印が不要となった

様式改正で一番大きな変化は、医療法人の実印押印が不要になったことです。

主には、事業報告書、登記事項変更届、役員変更届となります。

また、監事監査報告書にも監事の実印押印が不要となりました。

参考:https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/iryo/hojin/oshirase/e030300020230921202154231.files/ouinhaishi2.2.pdf

おそらくG-MIS(医療機関等情報支援システム)による提出が可能となり、印鑑押印を求めることへの整合性が取れなくなったため、実印押印の要請が無くなったものと思われます。

医療行政に携わる士業にとっては、多少の負担軽減にもなるかもしれません。

ただ、従前通り紙で提出するのであれば、引き続き実印押印を求める方が筋を通しているようにも思います。

実印押印を求めるというのは、それだけ重たい行為だからです。

それゆえ今回の突然の改正は、少なくとも私は、何か引っ掛かるものを感じます。

監事監査報告書に実印押印が求められる根拠

医療に関して、この業界ではとても有名な税理士先生がいます。

その先生は、監事監査報告書への実印押印を求める具体的な根拠は無いと言っていました。

確かに監事監査報告書について医療法を調べると、第51条から第52条に具体的な記述がありますが、実印押印を求める記載はありません。

東京都のホームページでは、下記のような記載があります。

医療法人監事監査報告書の個人の実印使用について

説明:

監事は、独立した立場で医療法人の業務及び財産の状況を監査し、不正の行為、法令等に違反する重大な事実があることを発見したときは、都道府県知事に報告する職務があります。都では、その独立性と重要性を踏まえ、当該監事就任の際に都へ届出された印鑑登録証明書と、監事監査報告書の監事欄の印章を照合することにより、監事の責任のもと押印された報告書であることを確認しています。このため、「医療法人運営の手引」等において実印を用いるようお願いしておりますので、御理解をお願いいたします。

出典:https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/07/30/11_10.html

あくまでお願いベースであり、法的根拠の明示はなく、実印押印を強制する文言ではないことが分かります。

常識を疑うことも必要

私もこの税理士先生の発信を聞く前は、当然の如く監事監査報告書に実印押印を頂き、東京都へは提出していました。

医療法人の管理は基本、都道府県ベースで行われているため、運営手引に書かれている以上、結果的に従う方がスムーズというのもありますが、手引に従うのが当然と思っていた節もあります。

監事監査報告書に実印押印を依頼すること自体は、それほど負担になるものではありません。

ただ、この税理士先生の特筆すべき点は、常識を常識と思わず、法令や通知などをきちんと読み込み、正しい主張を理路整然と行っているところです。

他の士業は、あまり発信はしていなかったと思いますが、堂々と専門家として主張すべきことをきちんと主張していました。

結果的に、今回、監事監査報告書に実印押印は不要となりました。

この税理士先生の言っていることは、正しかったということになります。

蛇足ですが、この税理士先生が著者である書籍は、どれも勉強になるものばかりで、同じ本でも何度も読み返すようにしています。

医療機関を顧問に持つ他の税理士にも、この先生の書いた書籍購入を勧めています。

まとめ

東京都へ提出する医療法人の事業報告書等に、実印押印が不要となった件について、色々と考察しました。

単に様式変更したということだけでなく、色々考えさせられる改正だったと思います。

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