医療法人が解散した場合の事業年度の考察

医療法人が解散した場合、事業年度がどのようになるのか考察します。

医療法人が解散した場合の事業年度に係る根拠条文

医療法人の解散については、医療法には第55条及び56条が定められています。

ただ、その条文に事業年度についての言及はありません。

例えば株式会社が解散した場合の事業年度については、法人税基本通達1-2-9、会社法第494条第1項に定められています。

法人税基本通達1-2-9

(株式会社等が解散等をした場合における清算中の事業年度)

株式会社又は一般社団法人若しくは一般財団法人(以下1-2-9において「株式会社等」という。)が解散等(略)をした場合における清算中の事業年度は、当該株式会社等が定款で定めた事業年度にかかわらず、会社法第494条第1項又は一般法人法第227条第1項《貸借対照表等の作成及び保存》に規定する清算事務年度になるのであるから留意する。

会社法第494条第1項

(株式会社等が解散等をした場合における清算中の事業年度)

株式会社又は一般社団法人若しくは一般財団法人(以下1-2-9において「株式会社等」という。)が解散等(略)をした場合における清算中の事業年度は、当該株式会社等が定款で定めた事業年度にかかわらず、会社法第494条第1項又は一般法人法第227条第1項《貸借対照表等の作成及び保存》に規定する清算事務年度になるのであるから留意する。

すなわち、事業年度開始日から解散日までが1事業年度となり、その後は1年ごとに事業年度を区切っていくことになります。

ただし、これは株式会社や有限会社などの話です。

医療法人の根拠法令は医療法であり、会社法は適用されません。

上記法人税基本通達1-2-9、会社法第494条第1項は医療法人には適用されないことになります。

法人税法では、第14条第1項第1号に、事業年度の特例が定められています。

法人税法第14条第1項第1号

(事業年度の特例)

第十四条 次の各号に掲げる事実が生じた場合には、その事実が生じた法人の事業年度は、前条第一項の規定にかかわらず、当該各号に定める日に終了し、これに続く事業年度は、第二号又は第五号に掲げる事実が生じた場合を除き、同日の翌日から開始するものとする。

一 内国法人が事業年度の中途において解散(合併による解散を除く。)をしたこと 

  その解散の日

上記の「内国法人」には当然、医療法人も含まれます。

ゆえに医療法人が解散した場合は、法人税法第14条第1項第1号により、事業年度開始日から解散日までが解散事業年度となります。

但し、その後の事業年度については、法人税基本通達1-2-9の適用はされないので、従前通りの決算月で決算を行うことになります。

具体例

3月決算法人が仮に8月末に解散した場合の事業年度は、下記となります。

株式会社の事業年度

 解散事業年度:4月1日~8月31日

 清算事務年度:9月1日~8月31日(以後8月末に決算)

医療法人の事業年度

 解散事業年度:4月1日~8月31日

 その後の事業年度:9月1日~3月31日(以後3月末に決算)

実務上の注意点

医療法人の解散の場合、都道府県による解散認可のケースが多いと思われます。

株式会社は比較的自由に解散日程を決められますが、医療法人の場合は、都道府県の解散認可申請の日程に左右されることになります。

ゆえに多くの場合、解散事業年度が1年未満となります。

認可日程と医療法人の決算月によっては、解散事業年度決算と毎会計年度の決算が比較的短い期間で続くケースもありえます。

医療法人が解散した場合、解散登記や清算人就任登記に伴い、解散登記完了届や清算人就任登記届の提出が、都道府県へ必要となります。

併せて都道府県への事業報告書は、毎会計年度終了後2か月以内に作成し、3か月以内に提出が求められています。

登記手続や提出書類作成が続くことになるので、税理士、行政書士、司法書士との細かな連携が必須となります。

まとめ

医療法人が解散した場合の事業年度についてまとめました。

株式会社とは異なるということだけ認識できれば良いと思います。

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